「ウェットプロセスで使用されるフィルターに求められる清浄度とその測定」
日本インテグリス株式会社
半導体製造のウェットプロセス装置には、さまざまな構成部材が使用されています。半導体の高密度化、高集積化にともなって、製造プロセスでの不純物の制御がますます厳しくなっていく中、プロセス装置に使用される構成部材にも、さらに高い清浄性が求められています。ここでは、その中のプロセス用フィルターを例にとって、清浄度の要求、あるいは不純物の測定について説明します。
薬液の要求純度と構成部材の清浄度
表1にITRS(International Technology Roadmap of
Semiconductors)の"Technology Requirements for Wafer Environmental Contamination
Control"
から、"薬液に対する要求純度"を示します。このように、薬液の純度に対する要求は、薬液の種類と対象の不純物によって異なります。それは、薬液ごとに粒子やメタルの付着挙動や影響度の差があるからです。薬液によっては、その要求レベルが非常に厳しいことが分かります。
表1 ITRS 2006 Update からの抜粋

では次に、これらの薬液に使用される構成部材に必要とされる清浄度を、どのように捉えたらよいか考えてみます。全ての構成部材に対して、個々の清浄度の規格を明確にすることは困難ですが、このITRSの基準に照らし合わせて見ると、要求される構成部材の清浄度とは、"これらの薬液の清浄度に悪影響を及ぼさないレベル" と言えるでしょう。
一方で、不純物を放出しない、あるいは全く含まないという構成部材は実質的に存在しません。そこで、プロセスに悪影響を及ぼさないためには、どの程度の清浄度が許容されるか、を考えることになります。
これは基本的には、
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接触する薬液中に、そのアプリケーションで問題となるような種類、あるいは問題となるような量の不純物を放出しないこと。
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初期の基準を若干上回る不純物放出があった場合でも、立ち上げ時に許容される時間内に速やかに排出されること。
と言い換えることができます。また、清浄度のレベルはプロセス、アプリケーションによって異なるため、プロセス、アプリケーショ ンごとに適正化される必要があります。
構成部材の接液面積
薬液への接触面積は構成部材によって大きく異なります。図1にウェ
ットバスシステムの簡単なモデル図と、主要な構成部材の接液面積の概算値を示します。フィルターが装置の中で最も接液面積が大きい構成部材であることが分かります。接液面積が大きいほど清浄度への影響が大きくなることから、ウェットプロセス装置内では特にフィルターの清浄度が重要であると言えます。
半導体デバイスのデザインルールの微細化につれてフィルターも高除去率化していますが、フィルターを高除去率にすると基本的には圧力損失が増加し、流量が低下する傾向にあります。一般には、高流量を保つために膜面積を増やすという方向(接液面積が増える方向)でフィルターは改良・開発されています。そのため、フィルターにはより高い清浄度が求められます。
| 図1. ウェットバスシステムの主要な構成部材と接液面積(概算値) |
図2. 強酸による動的抽出の例 |
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溶出物の種類と溶出特性
清浄度の対象となる不純物には、粒子と各種溶出物(有機物、アニオ
ン、メタルイオンなど)がありますが、ここでは粒子以外の不純物について、その種類とその溶出特性に主眼を置きます。
構成部材から不純物が溶出する場合、その溶出特性は不純物の種類、
使用する薬液の種類や温度などの使用条件によって大きく異なります。同じ成分でも、ある薬液中にはほとんど溶出しないが別の薬液には溶出しやすい、という例は多くあります。これには構成部材、
その中の不純物、使用する薬液、それぞれの化学・物理的性質が深 く関わってきます。
表2はさまざまなアプリケーションで用いられる薬液に対して、どの
ようなタイプの物質が溶出されやすいかを示したものです。このよ
うに、不純物の溶出しやすさは、その不純物の薬液への溶解性に大きく依存し、それは薬液の温度、pH、極性、電位、錯体形成能、あるいは界面活性剤などの共存物質などによっても変化します。一方で、これらの溶出特性から薬液の清浄度を考える上で、プロセス、アプリケーションごとに不純物の影響度は異なるということを知っておく必要があります。
表2. 各薬液中への溶出物

微量不純物の測定
前項で示した溶出物の一般的な測定方法について説明します。
溶出物の測定は抽出と測定という2つのステップでおこなわれます。
このうち、抽出には大きく分けて、静置抽出法と動的抽出法とがあります。半導体製造のウェットプロセス装置の構成部材は、一般用途に比べて清浄性の高い材料が使用されており、溶出物は基本的には微量です。また、もともと清浄度の高い薬液に影響を与えるかどうかを見極める微量レベルの測定のため、静置抽出、動的抽出いずれにおいても、抽出効率を高める方法が採用されています。
たとえば、静置抽出とはフィルターを薬液に浸して不純物を溶出させる方法ですが、目的とする不純物をより効果的に抽出する薬液を
試験液として用いる、あるいは実際に使用する場合の接触時間よりはるかに長時間浸して抽出させる、という手段をとります。一方で、
動的抽出は、フィルターを薬液に浸すのみではなく、通液することによってさらに抽出効率を高める方法ですが、ゆっくり通液する、
あるいは少量の薬液で循環抽出させるといった方法がとられます。 図2にフィルターからのメタル成分の抽出を目的とした、強酸による動的抽出の例を示します。
次に、このようにして得られた抽出液に対して、目的に応じて定性分析あるいは定量分析がおこなわれます。表3に測定対象成分、分析方法、分析機器についてまとめました。
表3. 不純物の分析方法と使用される分析機器

問題となる不純物、あるいは測定したい対象成分が明らかな例とし
て、メタルやアニオンがあります。微量成分を分析するには高感度測定が必要であり、抽出薬液によっては前処理に工夫が必要ですが、
概ねその測定方法は確立されています。近年では、ICP-Ms や濃縮法によるイオンクロマト分析が一般化しています。
溶出物分析の中で特徴的な分析法として、蒸発残留物量の測定があ
ります。これは抽出液の溶媒を留去して残った残渣物の質量を精密測定する方法です。残渣物の中には有機物、無機物、あるいは粒子といった全ての放出不純物が含まれる可能性がありますが、抽出液の性質を考慮した定型的な試験になっています。
抽出される微量有機物中には色々な成分が含まれています。それら全てを同定し定量するという作業を日常的におこなうことは大変ですが、総合的に分析する場合の例を図3に示します。これは、フィルターをある薬液で抽出した液をクロマト等の手段で分離し、種々の検出機器を用いて定性や定量を分析する、という流れを示しています。一旦このような方法で、典型的な有機物溶出成分を同定解析した後は、日常的にはFT-IR
などを用いたパターン分析や指標となる成分の定量分析をおこないます。
これらの測定や分析は、どのような不純物がどの程度溶出されうるかという観点からおこないますが、その他、不純物がどのように立ち下がるのか、を見る測定もあります。図4は超純水ラインにフィルターを装着した際の、TOC(全有機炭素量)の立ち下がりの測定ライ
ンを示しています。
| 図3. フィルター抽出後の微量不純物分析の例 |
図4. TOC 立ち下がり測定ライン |
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まとめ
半導体製造プロセスの要求を満たすため、プロセス用フィルターの清浄化の改善は絶えずおこなわれています。その一例として、クリー
ンな原材料の使用、製造や洗浄工程の改善などが挙げられます。また、その清浄度を判定する微量分析方法も、それに伴って整備が続 いています。
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